Sound Ledger

音の台帳

町にどんな音があるかを、朝・昼・夕方・夜・季節に分けて記す。
歌詞に音を書くときも、MVで音を描くときも、ここから選ぶ。

6:12 の始発 汐凪駅 車止めの向こうへは、音が届かない。
水を撒く音 鮮魚店 朝しか開かない店が、昼前に店じまいする合図。
朝凪 町全体 一度目の無音。海風と陸風が入れ替わる数分。

何も来ない 汐凪駅 8:31 の次は 11:20。この二時間四十九分、駅は無音。
反響する足音 商店街 人が少ないほど、よく響く。
遮断機の警報 潮止踏切 下りている時間が異様に長い。

夕方

揚げ物の音 精肉店 匂いより先に、音が届く。
自転車を押す音 八幡坂 上りは押す。下りは乗る。
夕凪 町全体 二度目の無音。レーベル名の由来。

通り過ぎる車 国道 止まる車より、通り過ぎる車のほうが多い。
自動ドア 国道沿いのコンビニ 町で唯一、夜も鳴り続けている音。
汐凪灯台 光は音を立てない。鳴っているのは風だけ。
21:56 の終電 汐凪駅 この後、町から鉄の音が消える。

季節

汽笛 通年 渡船。1日4便、最終は十八時。
波だけが大きい 十一月の時化 船が出ない日、港は波の音しかしない。
打上 三十分 8月14日 一年でいちばん大きい音。坂の途中では、光より先に音が届く。

この台帳の核心

凪の数分間は「何も鳴っていない」のではない。

風の音が消えたとき、それまで風にかき消されて聞こえていなかったものが聞こえる。遠くの踏切、誰かの自転車、家の中のテレビ、自分の呼吸。

汐凪レコーズが録っているのは、
静けさではなく、
静けさの中で初めて聞こえるもの